『つちもちしんじ作品集 浮き世』の話

こんにちは、シカク代表たけしげです!!
世間ではコロナウイルスがすごいことになっていますね。まさかこんなことが起こるとは思いませんでしたね。世界はどうなっちゃうんでしょう。

ところでさる2月25日、シカク出版から1年以上ぶりの新刊『つちもちしんじ作品集 浮き世』を発行しました!

★特設サイトから試し読みができます★

この話をブログに書きたいと思いつつ、コロピッピのせいでてんやわんやしてしまいなかなか時間が取れずにいました。でも通販で実施中のシカク出版送料無料キャンペーンが3月31日までということもあり、いつ書くの今でしょとようやくキーボードに向かっております。


つちもちさんは、現代日本の風景をどことなく浮世絵っぽいタッチで描くイラストレーター。
過去にSNSで『東京下町百景』という連作を投稿しており、それをまとめた本をシカク出版から2015年に発売しました。

こんな感じの絵が100枚

その『東京下町百景』は2年ほどで完売。発売以降もつちもちさんは活動を続けていたため、増刷ではなく新作を加えた増補版をいつか出したいねという話をしていました。
その話が昨年の夏ごろ動き出し、増補版ではなく全く新しい画集として完成したのが、先月発売した『浮き世』です。

建物や景色は確かに現代のものですが、どこか懐かしい。見れば見るほど絵の中に吸い込まれていきそうな、不思議な魅力を持った作品が200点以上収録されています。

ありがたいことにこの画集、日本だけでなく海外でも評判となってくれています!
フランスの出版社「Les Images Dérisoires」は、フランスで『浮き世』を入手できるようクラウドファンディングキャンペーンを実施(3月27日に見事100%達成!)。
またNYにあるセレクトショップ「SPOON & Tamago」では、既に100冊近く販売してくれています。
江戸時代の浮世絵がヨーロッパで高く評価されたのと同じ道を『浮き世』が歩んでくれたら嬉しいなあ、なんて思っております。

日本では、先日まで大阪のシカクで発売記念展示を開催。
そして4月1日〜4月30日に東京・吉祥寺のBOOKSルーエさんにて、つちもち作品のルーツに迫る展示&選書フェアを開催いたします!
そのあとの展示も実は決まってはいるのですが……どうなるかちょっと不安ですが……とりあえずいつか何かは起こります!


『浮き世』は全国書店で注文・購入できますので、どうぞよろしくお願いいたします!
ちなみに一部書店では特典A3ポスターがつきます!(対象店舗は特設サイトをチェック!)
またシカク通販だと3月31日まで送料無料で購入できますので、ぜひよろしくお願いします〜!!


ここからは恒例の編集裏話です!!
興味のある方はどうぞ!

先ほども書いた通り、当初は『東京下町百景』の増補版として企画が始まりましたが、つちもちさんと相談したり作品を見ているうちにまったく新しい作品集にしたいという気持ちがだんだん強くなっていきました。
そのきっかけとなったのが、「都鳥」の柏木さんが立ち上げた令和新版画プロジェクトです。

令和新版画プロジェクトは、めちゃくちゃざっくり説明すると「版画の伝統技術を使って現代版浮世絵を作ろうぜ!!」というプロジェクトです。
(詳しく知りたい人は柏木さんのnoteをぜひご覧ください!)

柏木さんは版元(出版社のような存在)なので、別の誰かに絵を依頼する必要がありました。そこで声をかけたのがつちもちさん。
その2人と、伝統技術を継承したプロ摺師・山本さんの3人で力を合わせ、つちもちさんのデジタルアートを浮世絵版画に進化させる試みが行われていました。

こういう絵を描いてるだけあって元々浮世絵版画が大好きなつちもちさん。令和新版画プロジェクトの作品を、自身の活動の集大成と考えていました。
なので新作画集は、このプロジェクトの作品と解説を中心にしたいという希望を伝えてくれました。

令和新版画プロジェクトで摺られ、作品集の表紙にもなった『雨の銀座』

そこで悩んだのが編集者である私。
令和新版画プロジェクトはまだ始まって日が浅いため、掲載できるのは『雨の銀座』だけ。解説を加えたとしても、ページ数は全体のごく一部です。
それを本の中心に据えるためには、ただ作品を集めるだけでは不十分。本そのものの背骨となるようなコンセプトを作り、それと令和新版画プロジェクトをリンクさせる必要があると考えました。

そうして頭を悩ませて、生まれたコンセプトが「過去から未来へ」。

話題となった前作『東京下町百景』から、徐々にイラストレーターとして活動の幅も作風広げていき、これからさらに世界へ飛躍していくであろうつちもちさん。
江戸時代の技術を復興し、新時代の浮世絵版画を未来へ残していくことを目指す令和新版画プロジェクト。
その二者をリンクさせることで、全体のまとまりを生み出すと共に、それぞれのさらなる発展を予感させる本にしようと決めました。


そのために、200点超の作品を3つの章に分けました。
第1章「町」、第2章「人」、第3章「未来」です。

第1章「町」は、『東京下町百景』をはじめとした風景画が中心の章。いわばつちもちさんのパブリックイメージに近い章です。
第2章「人」は、『東京下町百景』の完結後に描いた人物の絵が中心。風景画から一歩入りこみ、別の町に暮らす人々をより身近に感じられる作品が収録されています。
そして第3章「未来」は、令和新版画プロジェクトの紹介、それから描きおろしの近未来下町風景画『MACHI-BITO』を中心に構成しました。どちらもつちもちさんにとっては初めての試みで、内容としても作家としても未来への展望を感じるものになっています。


それから……絶対言わないと伝わらないけどマジで頑張ったから知って(そしてあわよくば褒めて)ほしいのでわざわざ書きますが、実はカバーにめちゃくちゃこだわったんです〜!!!

平和紙業さんの「まんだら」という紙なんですが、これ洋紙じゃなくて、美濃和紙という伝統的な和紙なんです。

和紙ならではのしっとりした手触りと風合い、柔らかな透け具合。そして何より、江戸時代からの伝統を復興させるというコンセプトに美濃和紙はぴったり。
そして題字は、伝統工芸品を感じさせる銀の箔押し。
裏表紙側には和紙の透けを活かしたちょっとした工夫をしています(これは買ってのお楽しみで)

しかし……
この素敵な「まんだら」という紙、一般的な本の印刷に使われる紙とはちょっと違ったため……
印刷所さんの製造中にめちゃくちゃでかいトラブルが発生しまして……
幸いにも努力と奇跡でなんとかなって無事に発売できたんですが、本当にもうダメかと思いました……

それだけに仕上がりを見たときは「頑張ってよかった〜!!」と感動ひとしおでした。
本を買ってくれた皆さん、カバーをさわさわしながら「これが頑張った紙か〜」と味わってもらえると嬉しいです!!


めちゃくちゃ長くなってしまったので、最後にもう一度改めて!

『つちもちしんじ作品集 浮き世』全国書店にて好評発売中!!

↑リンク先で試し読みもできるので、気になる人はぜひ見てね〜!!!

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